平成24年度「焼津鰹節伝統技術研鑽会(けんさんかい) 切込作業」
去る5月29日午前8時より静岡県水産技術研究所加工棟にて、技術指導員はじめ役員・青年会員多数参加のもと、平成24年度の焼津鰹節伝統技術研鑽会切込 作業が行われました。近年の鰹節製造はパック入りの削り節や液体だしなどの製品のための原料製造が多く浸透しています。ですから鰹節製造業者の多くは製造 工程が機械化により、先人たちが編み出した焼津独自の製造法が失われつつあります。そこで後継者たちに本節製造の技術を体得し、後世に残しておこうという 目的で毎年行われているのが研鑚会です。現在、焼津市の指定無形文化財となっています。
当日は技術指導員(講師・マイスター)が始めに手本を披露し、その後技術指導員の指導のもと青年会員が包丁の砥ぎ方から頭落し、三枚卸し、煮熟、水骨抜、修繕、一番火(手火山方式)までの作業工程を行いました。
◆ 包丁研ぎ
最初に包丁を研ぐことから始まります。やはり道具を大事にすることも伝統というか職人としての勤めですね。
※3つの包丁を使い分けて鰹を処理します。
◎ 頭切り包丁 頭切り → 腹身切り
◎ 身卸し包丁 背皮剥ぎ → 三枚卸し
◎ 相断ち包丁 相断ち
◇ 本日の鰹の処理工程でまず生切り作業を行いました。
今回使用したのは約6kgの一本釣り南方冷凍鰹を担当者が吟味して選んだものを使用しました。これを前日容器に入れ解凍しておきました。
最初は講師の方々が切り込むのを青年会員がじっくりと観察します。すばらしい包丁さばきに長年の経験がそこにはあります。以下は生切りの工程を作業別に分けて掲載しています。
◆ 頭を切る (胴体から頭を切り離す作業です。一直線に切るのでは無く、L字型に包丁を滑らせながら、突起を残す焼津式の切り方です)
◆ 腹身を切る (腹の身を切る作業です。包丁全体を使って引くように切ります)
◆ 背皮を剥ぐ (背びれと背中の皮に切込みを入れてそぎ落とします)
◆ 男節(背中)側を切る (中骨に沿って包丁を滑らせ背中側の半身を切り離します)
◆ 女節(腹)側に切込みを入れる (三枚に卸す時包丁を通すため鰹の尾びれに向かって両側に切込みを入れます)
◆ 三枚に卸す (腹側の半身を尾から頭の方向に向かって切り離します)
◆ 相断ちをする (半身を背中側男節・お腹側女節に切り分けます。男節を若干大きく切り分けます)
◆ 煮篭に並べる (煮たときに型が崩れないように方向性を持って煮篭に並べます)
◇ 技術指導員の生切りの後、引き続き青年会員への指導が始まりました。
鰹節組合の青年会員と言っても鰹を実際に包丁で切っている人は少ないです。毎年1回のこの講義にだけ包丁を持つ者もいます。頭ではわかっていてもうまくは切れません。それでも鰹節に関わる仕事に携わっている限りこの知識を持っていることは役に立ちます。
◇ 生切りで余った身は細かくすりつぶして、後の修繕の材料とします。
◆ 煮熟
生切りされた鰹は2時間弱、煮塾釜で煮られます。
◆ 骨抜き
その後釜から出して骨抜き作業を行いました。水槽の中で行うので水骨抜きといいます。これは機械化が進んでも人の手が必要な作業です。
◇ 骨抜きが終わると15分間、クッカーで蒸気殺菌します。
◆ 修繕
その後少し冷まして、修繕を行います。修繕は煮た鰹のひび割れや凹凸に生切りで余った鰹のすり身を使って平らにする作業です。本枯節製造ならではの作業でもあります。カビをつけない荒節製造が主たる現在にはあまり行われない作業です。
◎ 修繕にはあじ切り包丁と竹べらを使って作業します。
◇ 修繕された後は生身を含むすり身を定着させるためにいったん先ほどのクッカーに15分間入れます。
◆ 焙乾(手火山)
本日最後の仕上げは手火山(てびやま)と言われる設備での乾燥作業を行いました。最近は一気に大量に乾燥させる設備を各社使用しています。今現在、手火山を使用している業者はほんの一部だけです。それでも焼津はクヌギやナラなどの枯れたいい薪を使うので香りは逸品です。
◇ 途中、上下のムラを少なくするために、手火山の上下入れ替えを行います。
◆ 搬出
最後に市内業者に委託するためにセイロに並べ終了です。
その後乾燥作業を行い、表面を削って、カビ付けと天日干しを繰り返し、秋に皇居で行われる新嘗祭のために厳選された鰹本枯節が献上される予定となっています。